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ことではありません。しかし、いざ里子を受託して新しい生活が始まると、親の立場、子供の立場、家族の立場が、さまざまな角度から垣間見えてくるような気がします。そんな時、いかに崇高な理念よりも、その日一日が悔いのない、それぞれの立場を全うした精一杯の生き方であって欲しいと願うのです。そうした積み重ねを”努力”と呼ばれる方もあるでしょう。しかし、そんな生易しいものではないことを、とくに里子を受託された方々はよくご存じのはずです。
未来、希望、自信といった、きらびやかな道標をめざしながらも、時として子供たちから教えられることの多いのが現実です。私が抱き続けた疑問への探求も、いつしか色褪せて、子供の頃の実体験が何の役にも立たなくなっていることに気付きます。そう、私の立場がとうに入れ替わっていたのです。親としての初心こそが、実は求めていた答えだったのです。しかも、その答えは膨大です。理詰めではなく、その人その人なりの心、愛、本音−その呻吟に裏打ちされた行動こそが、いつか子供たちの成長によって報われるのだと言い聞かせております。
「やっぱり子供は可愛い、理屈なんて何にも要らない。そして大変な子供こそ心から

 

 

 

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